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つらつらと自分が観たものの感想を書いていくブログ。

【映画感想】「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」【ネタバレなし】

2月に公開の予定が,諸事情により公開の遅れた今作を今更ながら鑑賞。

正直,賛否両論だったのと「クドカンは作品によって合う合わないが激しい」という認識だったので,おっかなびっくり見に行きましたが…◎作品でした。


『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』予告編

 

以下,続きを読むで感想。

 概要

上映時間:125分

 

高校3年生の大助は,修学旅行中の不慮の事故で死亡,地獄行きになってしまう。

地獄で「地獄図(ヘルズ)」と呼ばれるロックバンドを率いる赤鬼キラーKによって

鮮烈な地獄デビューを果たしてしまう大助。

まだ気になるあの子にキスもしてないのにこのまま死んでいられるか!

閻魔大王から与えられる7度の転生の機会を使って大助は人間への生まれ変わり,そして気になるあの子、ひろ美ちゃんへキスををするため地獄で奮闘する。

 

評価

★★★…バンドシーンとかを考えると劇場で見たい(オレはな。俺は好きだよオレは)

 

賛否両論!「僕たちはクドカンに何を期待していたのか」

導入からしてめちゃくちゃな話、というかいかにも「演劇にありそうな設定」というのが予告を見たときの一番初めの印象でした。蓋を開けてみれば案の定、滅茶苦茶も滅茶苦茶。

フィーリングで感じろといわんばかりの地獄設定に、死んでも死んだことに気づかないお気楽高校生。挙句の果てに派手メイクなデスメタルバンドといわれれば納得してしまいそうな地獄の面々に「オウオウ、この映画大丈夫なのか」と思わずにはいられませんでした。杞憂でしたが。

 

この映画を見る前にいくつかサイトをめぐったり、ツイッターの感想なんかを観たりしたんですが、僕の見た範囲では感想は両極端だなーというイメージ。

「全体的にいい加減、主人公も最低だしくだらないネタ振りばかりで面白くない」

というのと、

「めっちゃサイコー!くそウケたわ!」

のどちらか(偏って調べてるところがあるので主観ですけど…)。あんまり中庸な意見がないというか合う合わないが「恋空」並みにはっきりしている気がします。

要は「頭使って観たいかどうか」みたいな。

補足すると、前者の人たちは劇中での説明不足さ(要はそういう笑いをクドカンに求めてる)や、主人公自体のモラルのなさからくるにじみ出る「うざさ」に反感を感じていて(なんだろう、映画通の人が多い気がする)、対して後者はもう文字どおりなんですが「面白い」以外の感想は抱いてないというか、そもそも細かいバックグラウンドとか設定とかカメラの動きがどーのこーのいわれても意味がわからない人たち、世の中を「おもしろい」「つまらない」の2択で語る人たちって感じです

僕としては、圧倒的後者の立ち位置。要は「コマケーことはいいんだよ!」精神で観るもんだと思っているのでそこまで設定のいい加減さに反感は持たなかったし、主人公が褒められた性格をしてない(これにも、そこまでか?と思いますが)点も別になんとも…という感じでした。

 

突き詰めると、この感想の二極化って「宮藤官九郎」という脚本家に期待していること、そこからのズレがあるからだと思います。

クドカンって若者にも人気あるし「木更津キャッツアイ」とか「あまちゃん」とか大ヒットドラマを生み出してるし、キャッチーでかっこいいしと結構「やり手」のイメージで、挙げた2つのドラマもギャグも織り交ぜつつちょっとホロリというか、「泣かせる」ところも差し込める脚本を書く…って感じがするんですね(個人的に)。

でもそれってあくまでドラマでの話というか、ある程度抑えて書いている「テレビ媒体」だからうまくいっているだけだろ、とは思っています。

この人の映画で言うと最近は「中学生円山」もそんな感じでしたが、ドラマから離れて映画とか舞台で本を書くと突然「クドカン」ワールドをバリバリ出してくるんですよね。

ドラマではライトな描写で済ましていたものをドギツク書いてくるというか、観ている方に「あー我慢していたんだなー」と思わせるところがあります。

でショッキングにショッキングに流れるうちに話し全体が間延びしてしまうというか、ドラマみたいに3→5→7→5→3→8って感じに丁寧に演出がこない、

10→1→10→10→10→1という急転直下の連続と常に力度100%で押し込んでくるので非常に疲れるし、面白くないと感じることも多々あります。

要はクドカンワールドの押し付けに疲れる。「オレを見ろ!」とばかりに、テレビみたいにこちらに歩み寄る気がゼロなところについていけなくなる。

 

まあ、ぶっちゃけ表現者ってそんなもんでしょって言われたらそれまでなんですが

この人の場合、なんだかんだ「外れのない」イメージが先行しちゃってるんで(「ギャラクシー街道」の三谷幸喜と一緒ですね)そこでがっくりした人が多かったんじゃないかなーと思ったしだいです。

だって地獄で転生して気になるあの子にキスしたいって言われたら、もうモラトリアム爆発、心にぐいぐい突き刺さるストーリーと適度なギャグを期待しちゃうのは

木更津キャッツアイを考えると無理もないでしょ!

 

 楽しむコツは頭を空っぽにすること

じゃあこの映画を楽しむにはどうすればいいだよ!と思った人。簡単です。

「馬鹿になれ」以上。

前述したように、この映画を評価しているのは映画の評価に深いところを持ち込まない人たちです。

主人公が死んだ?地獄にきたら赤鬼がロックバンドだー!?マザ○ッカーッ!!

ここで首を傾げるようであればたぶん一生面白いと思うことはないと思います。

この映画は、多分に演劇的なところが多いです。

地獄自体がセットを駆使していてまるで舞台を使ってるような感じになっていますし、

劇中は終始ミュージックを駆使して説明しないでフィーリングに訴えかけるシーンがあります。

「地獄ってこういうところで、輪廻転生にはこういうルールがあって…そもそも主人公の着地点(最終目的)はここなんだよ!」

というのは、本当にあっさりしているというか「そこは察してくれ」といわんばかりにいい加減な説明(良い意味で)しかないので、そういうところに注視していると瞬く間に置いていかれます。

そもそも、主人公が(クドカンの考える)高校三年生なので、年齢ゆえの軽さというか、自ら現状を掘り下げようとしない、目標もころころ変わるし死んだことへの悲壮感も感じさせません。本当に現状になじんでいるというか、コメディとして復活への道筋は提示されているので(それも地獄ロックでメジャーデビューすること…頭痛い文章ですね)そこから過度に外れないので、展開が本当にわかりやすいです。

 

こういう点と、クドカンが良くやるメタい表現、このあたりがうまく混ざってライトに笑える作品に仕上げているんですね…だから「映画が好き」って感じの人たちからあまり賛同されないのかなーと。

映画好きな人からするとこの手のものはもうある種作られすぎた、見飽きたネタであってここに新鮮味を感じる若い人ほど面白いと思うという…まあそれこそクドカンって感じです。

 

僕は好きです。

個人的には面白かったんだけど、舞台でやってくれないかなーと思うところもあったり。地獄のセットとか謎のバンド対決とかね。シアターオーブあたりでグイングインギターを鳴らしてもらえたら感無量です。

あと、作中で一番評価するとしたら、やっぱり「ひろ美」ちゃんじゃないかなー。

もちろん可愛いんだけど、なんというか、この、スクールカースト中間層以下でも

手が伸びそうでそれなりに可愛い、というのをうまく表している気がする。

なんかこう…バスのシーンとかね…あれグッと来る人多いと思うんだよなー。

ほろ苦い経験をした人ほど。「そうそう!ここで勘違いするんだよ!」みたいな。

そういうところとか。無茶苦茶なんだけど割とポイントをつかんでいるところもいい映画でしたね。ただ嫌いになる人の気持ちもすごいわかるので、そのあたりよく検討したほうがいい映画です。むしろ無理やり楽しもうぐらいの方が面白いかも。